森です

ネパールはヒマラヤのふもと、ポカラからの更新です。

今回もまた、前回の続き、
「ストライク」
第3回です

このストライク!ってタイトルはですね
けっこうよくできてるんですよ。
はい。

今回、ネパールで遭遇したストライキですが
英語では
Strikeと綴るんですね
発音は「ストライク」となります。
一方で、野球の用語であるあのストライク、ボールの、「ストライク」という言葉も英語では
Strikeと、
同じ単語なわけです

そこで、今回は私が運悪くストライキど真ん中
ビシッとはいってしまってストライク!

という、そんなダブル・ミーニングにしてあるわけです。
イカしますね。

そしてこのストライクも今回が3回目
「スリーストライク、バッターアウッッ!」
ってなことで
退場にされなければいいんですが。

では始めます。

ストのため
国境の町カカルビッタで一泊をするはめになり
宿探しはじめました。

メインストリート沿いにあるホテル
「ホテルアッサム」に行くと
受付の前にある食堂に、二人の旅行者がいる。

見ると、入国管理局の前で座ってた二人です。

「ハロー、ここのホテルに泊ってるの?」
と話しかける。

「いや、ここで情報を待ってるんだ。テレビで五時からストに関するニュースがあるらしいからね」

アジア系の顔だちをした男が、低く落ち着いた声で返事をする。

食堂には、ひとつの小さなテレビが据えてある。
5時まではあと30分。

この「ホテル・アッサム」は満室だったが、
その5時のニュースを、私もそこで待つことにして座り、コーラを頼む。
夕方になってもまだ蒸し暑い、7月のネパールです。

その旅行者2人は夫婦で、
夫はインド人、妻のほうはフィンランド人とのこと。

二人はいまフィンランド在住で、
休暇を利用して夫の故郷であるダージリンに来ていたらしい。

しかしそのダージリンでストが始まったから、それを避けてネパール側にきたわけだけど
「またストに捕まったよ」
と、夫のイライザは低く、そしてとても抑制された声で言う。

「ここまで私たちを乗せたあのタクシードライバー、ストのことなにも言わなかったわ

奥さん(イーレ?発音難しいです)は、忌々しそうにそう不満を述べる。
彼女はかなりナーバスになっていて、そして疲れている様子だ。
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そこに同じくダージリンから来たという
シンガポール在住のネパール人が加わり
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彼の故郷はここからそう遠くない場所にあり、
ここ数日の間に、親戚がバイクで迎えに来てくれるのだが、
英語が話せるので、ストの情報を集めてくれていた。

そんな四人でニュースを待つことに。
状況が不透明なので、はやく情報が欲しいものだ。

テレビでは日本のヒーローものが(スパイス戦隊ジャリパイグリー!ではない)
ネパール語の吹き替えで放送されている。


そして午後5時になった。
しかしニュースはない。

さらに、ホテルアッサムのオーナーによると
明日の朝4時にバスがでるというのも
あまり信用できない情報みたいだ。

ニュースがないのので
しかたなくホテルを探して4人でチェックインする。

シャワーを浴びて(お湯なんかでないよ、もちろん)、
食堂に。

さて、これからどうしたらいいか
どうやったらカトマンドゥに行けるか

今まで集めた情報を出しあって相談して、
いくつかの方法が提案される

乗合バスならカトマンドゥまで行ける?という情報もある。
 しかし最低でも自力で10人集めないとかなり割高に。

タクシーで100キロ離れたイタリーという町までいけば
 そこからの道はオープンになっている?という情報もあり。
 しかしこれも割高(そもそもタクシーがルールを破りそこまで行ってくれるかも不明

バイクタクシーでイタリーまで行くという方法も。これはタクシーよりは安い。
 ただ、バイタクがルールを破るかどうか。
 さらに、山道を三時間、バイクの後ろで、しかも雨季の今、雨に降られる可能性もある。
 その行程を、はたして奥さんが耐えられるかどうか。

一度ネパールからインドに出る。そこでタクシーを捕まえて
 そこから国境に沿って南下して、次の入国管理所まで行く
 という方法もあるらしい
 しかしイライザたちのビザがシングルビザで、一度出たらまた取り直さなきゃいけない
 それに、インド側で次の入国管理所まで、どれくらいの費用がかかるかも不明

飛行機。140ドルかかる。一番割高。払えないわけでもないけど
 できることなら控えたい。

明日の朝にバスが出るという情報を信じてただ待つか。

そのとき、「ホテルアッサム」のオーナーから連絡がきた。

どうやら、もしかしたら今夜のうちに
カトマンドゥ行きのバスが走る
可能性があるというのだ。

さっそくホテルアッサムに行ってみると、バスが出るというのは本当のようだ。

「ストは終わったの?」と私。
「わからん。だけど試してみるんだよ。ルールを破るけどな」

ホテル・アッサムのオーナーが
私たちにそう説明する。

「どうする?少しリスクはあるけど、席取るか?」
そう長く相談することもなく、
やってみる価値はあるだろうと話は決まる。
「路面が悪いから、後部座席は揺れるわ。前の座席は空いてる?」と奥さん。
「ちょっと待って・・、ああ、あいてるよ」とオーナー。
「じゃあそこを3席」
そうやって私たちは三人分のチケットを購入。

出発は夜10時半。

あと二時間ほどだ。

「意外にあっけなく解決したなあ」
そんなことを思いながら、イライザたちと別れて水を買いに町を歩く。
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ストの最中でも、町に緊張感はない。
今はまだそうなのか、それともこの先もこのままなのか。
私がそれを感じとれていないだけなのか。

聞けば、インドやネパールではストがよくあるそうなので、
きっと彼らには、停電と同じようなものなのだろう。

私はこのトラブル自体は、厄介だけどまあしょうがない
そんな諦めもある
ことさらナーバスにはなっていない

ただ旅のスケジュールがタイトなので、
足止めが長くなると、
訪問をあきらめなきゃいけない町が増える。
それで、できるだけ早めに移動はしたいと考えていた。

だからバスに乗れることになったときは
とてもホッとしたものだ
そうするとやはり
まあしょうがないとあきらめていたことも
やはりストレスになっていたんだなと
それに気づいたもんです。

そして
国境の町は、闇に包まれていく。
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ホテルに戻ってパッキングをしていると、激しくドアが叩かれます。
誰かと思えば、ホテルアッサムのオーナー。

「おい早くしろ、バスが出るぞ」
「出発は10時半だろ。まだ9時前だよ」
「とにかく出るんだよ!早く用意しろ!!」

とオーナー、部屋に入ってきて私を急かす。

荷物を詰め込んで階下に降りると、イライザたちも出てきていた。
「なんだかあわただしいな」
イライザがバックを担ぎながら、いつもの抑制の効いた声で言う。

メイン道路に出るとバスが一台、
夜のなか国境に背を向けて止まっているのが見える。

駆け寄ると、しかし中はたくさんの地元民で満載だ。
みんな窓わくに押し付けられるくらい、押し合いへしあいしている。
もちろん、席はすべて埋まっている。

「ちょっと、私たちの席はどこよ!」
車内の様子を見た奥さんがそう叫ぶ。
いいから乗れ!もう出発だ!」
オーナーが私たちの背中を押す。
「いやよ!席を見つけてからよ!私たちにはチケットがあるんだから!」
と、奥さんは抵抗します。

もちろん私も、こんな状態じゃ乗る気にはなれない。
サウナのように暑いバスのなかで、
席もなく
中腰のままバンピーな道を
乗車率320%の車内で
葡萄のように圧搾されながら14時間行く、
なんて、ちょっと耐えられません

一向に乗り込もうとしない私たちに(当たり前じゃ)
しびれを切らした「ホテル・アッサム」オーナー
がバスに乗り込み
乗客を怒鳴りつけてなんとか席を確保しようとします。

しかし乗客も簡単に譲るわけはなく、
車内は口論怒声が行き交い、
かなり殺気だっています

そんな中でオーナー、1席だけ無理やり空けさせた。

「ほら席ができたぞ!はやく乗れ!」
オーナーが私の服を引っ張り、バスに乗せようとする。

「1つだけだろ!俺たちは3人なんだ!」
オーナーの腕をふりほどいて、私が言います。

するとイライザが、肩に担いでいたバッグを地面におろし、私に言った。

「おいモーリ(イライザは私をこう呼ぶ)、席はひとつだ。お前が行ってくれ。俺たちは残る
と。

まるで映画アルマゲドンのブルース・ウィリスばりの言葉をかけてくれますが、

こんなナーバスになった車内に私ひとりで、乗る勇気、なんてもってません。

「いや、俺も残るよ。俺らは乗らない!行ってくれ!」
私はそう言って、バスの腹を叩いて合図します。

するとバスは点けていたライトを消して、国境の坂を闇に向かって下っていった。

混乱と緊張が去って沈黙が残った。

バスが行ったあと、
「ホテルアッサム」のオーナーが汗を拭きながら、首をすくめてみせる。
彼のその仕草で、これは席がとれてなかったことに文句を言っても
なんの意味もないなあと、
そう感じる。
たぶん旅をしているとこんなふうに、
物事の許容範囲が広がっていくんですね。

「バス、明日は動くのかな」オーナーにそう聞いてみる。
「たぶんね」
「なんだって、たぶん、だな」嫌味ではなく、茫然として独り言のように私は言った。
「誰にもわからないんだよ」
イライザが、呟くようにそう応えた。

「でもどうして、あのオーナーはあれほど俺たちをバスに乗せたがったんだろ」
オーナーと別れてから私はきいた。
私はオーナーのあまりの必死さが疑問だった。
「金の問題(money things)だよ。外国人のチケット料金は地元民の料金よりもかなり高額だから、キャンセルさせたくなかったのさ」
とイライザ。

なるほどね。
だから席がとれてなくても、とりあえずチケットを売ったわけだ。
売っちゃえばなんとかなると。

旅をしていると、こういった正直な欲望によく出くわします。
お金が欲しい。食べ物が欲しい。そういったものです。

さっきのバスにしても、誰もが自分の場所を確保して
他人に譲ろうなんて気はまったくない。
ただ、あの状況では、欲望を隠さないことが正常であって、
をれが醜いなんて、まったく感じませんでした。
あるべき姿を、目にしていると。そういった感じです。
あの状況で、自分が席をあけてやろうとなんていう人は、きっと聖人です。

日本はとくに、欲を悪いことだとみなす意識がありますね。
欲望、言いかえれば「我」を出すのを好しとしない。
そういう文化なんですね。
それでうまくやっていけてる部分もあれば
それがストレスになっていることもある。

私はもっと、わがままになってもいいと思います。
それ以上に、人を思いやる気持ちがありさえすれば
ものごとはうまく回っていくんだと思んですが、
どんなもんでしょうかね。

・・・・


ホテルに戻ると、カウンターの兄ちゃんが不思議そうな顔をします。
「あれ、どしたの?」
「満員だった」
私たちはくわしく説明する気力もなし。
「へえ、そっか」
彼は少し微笑んで、
「部屋はもとのとこでいいよね」と、
私たちにキーをわたす。

その夜は疲れていたが
湿気と蚊のせいで二時間しか眠れず。

あのバスに乗っていた連中は、
この熱帯夜のなか
細い山道を無事にカトマンドゥまで走り抜けられただろうか。
そんなことを考える。


翌朝

やはりバスは眠ったまま。
動く気配はなし。
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入国管理官は、
「今日の正午でストは解除だよ」
と言いますが、もう彼の言葉はあてにしません。

そこにとうとうインド側の国境もストに入ったという
情報が入ってきます。
確かめてみると、これは本当の情報でした。

「モーリ。俺たちチェックメイトされたぞ」

イライザが表情も変えずにそう嘆きます。
奥さんはストレスで部屋にこもって出てこない。

タクシーの姿もなく。
正午を過ぎても解除される気配はやはりなし。
どうやら今回のストは、かなり大規模なものみたいだ。

このままだとあと何日ストが続くかわからない。
もう最終手段・飛行機を使うことにします。

最終の便は二時なので、あと二時間もない。
そして問い合わせると、
空席はたった二つ。

どうするかとイライザと目を合わせますが、
やはりここは私が退くべきでしょう。

「イライザ、君たちが行きなよ。俺は明日にするから」
と、バスの時の恩返しのつもりで言います。

「モーリ。お前の提案は嬉しいが、それは不可能なんだ」
「なんで?」
「空いてるのは外国人チケットだ。ローカル(ネパールやインド人)の席はない。俺は乗れないんだよ」
ここでもまた、money thingsです。

「そっか。じゃあどうするか」
と、別の方法を考え始めたところ、
ローカルチケットのキャンセルが発生。
これで外国人用チケット2枚、ローカル用1枚
やっと3人分のチケットが揃いました。

その情報を聞いて、奥さんもやっと元気が出た様子。

それからあわただしく、バイクタクシーと交渉して
空港までならと、バイクを出してもらうことに。

3台のバイクタクシーの後ろに乗り、20キロ離れた飛行場へ向かいます。

昼過ぎのネパール国境。晴天。

カカルビッタの町はすぐに終わり、
すぐに田園風景が広がります。

鮮やかな緑広く青い空に、
ネパールに入国してから初めて、この国の美しさを知る。


飛行場まであと30分。ストライキ継続中、道にはタクシーやバスの姿は一台もなし。

まだつづく!
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