前回アフリカのことを書いたので
今回もアフリカのことを書きたいと思います。

鉄道ファン必見、かもしれない
ジンバブエを南下する鉄道に乗った話です。
(2012年5月の状況)

ジンバブエでヴィクトリアの滝。
ザンベジ川の上から
それはそれはおそろしいバンジージャンプを試みたあと、
夜行列車でジンバブエを南下しました。

列車はジンバブエの「ヴィクトリアフォール駅」から出発。

始発駅であり終着駅でもある駅。

列車が来るまでまだだいぶ時間があるので、
駅舎もプラットホームも、昼寝をしているかのよう。
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チケット売り場が開くのを待ってから
チケットを購入。

目的地はジンバブエ南部の町、ブラワヨ。

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夜行列車の運賃は
二段ベッドのコンパートメントで
なんと12ドル(950円)!

しかも
私が選んだ12ドルの席は、この列車の最高額の席です。

さらに安い席もありました。
夜行の寝台席列でこの値段は破格だ。

第二次ベビーブームの
日本の中流家庭に育った私は、
長い不況の今と違い
「安ければ安いほうが良い」
という人生訓は受けずにすみました。
(代わりに「高いものはよいもの」という迷信があった)

しかし旅の間はまた別でして
判断基準は「安いこと」です。

そんな私でありますが
この列車の低価格には
「こんなに安くて大丈夫なのか?」
と疑心が腹の底に湧いてくる。

まさか人力の列車だったりして。

車輪の上に人力の動力装置がついてて
乗客はそこで一晩働かされるとか。

もしくは、モーリタニアの鉄道みたいに
石炭の上で寝かせられるとか・・・


不吉な妄想は杞憂に終わり

午後19時、
やってきた列車は、とてもクラシックな列車。

乗客はあまり乗っていません。
コンパートメントは貸切です。

外見も古い列車だなと思っていましたが
内装も実にクラシック。
そして、かなりオンボロだった。
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シートは大きく裂けている。

窓枠には脂に埃がひっついて固まっている。

あ、室内に給水設備がある!
お洒落だなあ。

まあ、もちろんそれも機能しませんが・・・
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こんな古い列車に揺られて
陽は暮れ夜がきた。

室内の電灯は、当然のように
ひとつ残らず壊れている。

だから、夜が来たらコンパートメントは暗くなる。

暗い中で、シートに足を投げ出して外を眺める。
外はサバンナ、星が瞬いている。

サバンナを走る列車の中から星を見る
旅ならではの至福の瞬間だ。

喉が渇いた。
なにか飲もうと、
ペンライトで室内を照らす。

カサカサッ

壁で何か動いた。

それがなにか、すぐにわかった。

「G」から始まり「I」で終わるあの生き物。

あるいは「C」で始まり「H」で終わるあの生物。

そう
ゴキブリ


大きさで言えば「ソラマメ」くらいのそれ。

壁から窓枠に移った。

それは触覚に風を受けながらうっとり、
星降るサバンナを眺めている。

それはじきに、するべき何かを思い出したように
踵を返して窓枠を伝わり始めた。

それが向かった先は
あの壊れた給水設備だった。

それは窪んだ水受けの、暗い部分へ姿を消していった。

それが給水設備の水受けへ消えていくその動作は、
玄関で靴を脱ぐように、
毎日繰り返しているような自然な所作だったから
きっとそこがそれの家なのだと理解できた。
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家があるなら家族もいるでしょう。

そう思ってライトを当てながら給水器を眺めていると
水受けの縁から触覚が現れた。

今度は二組。

合計4本の触覚。

やはり家族が・・・
と思っていたら
いつのまにか給水設備の上方にある鏡の淵にも一匹
別の個体がやってきていた。

上方の個体の足取りは、
「給水設備への道こそが家路である」
と迷いない足取り。
他4本の触覚の方向へ
下っていく。

その3組、計6本の触覚を交互にライトで照らしつつ
「・・これどうすっかな」
と考えているうちに、
全ての触覚が給水設備の水受けへ潜り込んでいった。

「一匹見たら百匹いると思え」

そういわれるGなので
3匹見たらつまり、そこに300匹いることになる?

あの給水設備の中には、300匹のそれがいるってこと?

・・・

以前、
インドのデリーにあるカーリー寺院へ行ったとき
寺院の中の壁の隙間すべてに、
ぎっしりとそれが詰っていたのを見た。

ジメジメとした壁と、ハイビスカスの赤い汁と
お香と、女神のご利益にあやかろうとひしめく
インド人の間でもまれながら
壁に詰まったそれをおぞましく見たものだった。

あの給水設備の中にそれが300匹いるならば、
それもまた、劣らずおぞましい。

ライトで中を照らしてみました。
暗くてよくわからん。

給水設備を足で蹴とばしてみました。
反応なし。
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それ以上、何をすればいいか思いつかない。

このまま夜が更ければ、私は眠るだろうし、

あの給水設備の300の家族は
夜はもっと活動的になる気がするし。

好奇心旺盛なそれらが
寝息をたてる私の襟首に入るかもしれん。

冒険心をもったそれらが
私の耳の穴を探検するかもしれん。

うかうかと寝てられん。

しかしそんな時こそ、眠気が強くやってくるもの。

試しに横になってみる。

そして床を照らしてみると、隅にやはりそれが一匹
歩いている。

触覚をひらひら動かして、
犬が無邪気に散歩するのに似ている。

「これで4匹目。つまり400匹」
と、ついそんな計算をしてしまう。

そして
それが一匹、それが二匹、と頭で数えているうちに
結局眠ってしまった。

夜のあいだ、それらに何かされたか
何もされなかったのか。

浅い眠りを繰り返して
気が付けば朝になっていた。

日本にいるときは、それが大の苦手だったが
旅に出てからは、けっこう平気になっていた。
神経が多少図太くなったのかもしれない。

とにかく、夜が明けてしまえばこっちのもの。

明るい車内から、アフリカの大地を眺める。
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地平線
たてがみの様に揺れる草
アカシアの木
そんな景色が果てしなく続いている。

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私と400匹のそれを乗せ
列車はブラワヨに到着。

私は下車するが、
それらが降りてくる気配はない。

このまま、またビクトリア・フォールに戻るのだろう。

こうやってそれらは毎日
ビクトリア・フォール駅とブラワヨ駅を
行ったり来たりするわけだ。

いったいそれらはなんの為に生きているのか、
それで満足してるのか。
そういった生き物の一生を考えると
なんだか不安なような、焦燥のような、
そんな胸騒ぎがしてくる。


私はもちろん、片道乗車で十分。
ブラワヨから西にある
首都ガボルネへ向かうことになる。

さて
アフリカの列車の話でしたが
気が付けばそれの話ばかりをしていました。

そんなところで。
今回はこれで。
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