森です。

今回は101カ国目の訪問国、スワジランド王国で起きた
私の旅人生で初の盗難事件の様子です。
(2012年5月)

「そいつ!」
という国境警察官の声で、
国境ゲートの人だかりから逃げ出した一人の男。
その男は警察の追走をふりきって、夜のスワジランドの森へ消えました。
_MG_2062のコピー_800

いったい何が起こったのでしょう。
状況がわかりません。とにかく、
「このラップトップ、どこで見つけたの?」
盗まれた私のPCを持ってきた女性警察官に訊きました。
「あの男よ。額縁を持ってた男。

どうやら私が詰め所にいる間に、
国境警察官がラップトップを捜してくれてたらしいのです。

彼らも状況的にあの額縁の男が怪しいと思ったらしく
男のピックアップトラックを調べて
私が開けるのをためらったあの額縁を、
バラしてみたところ・・・
「額縁の間に隠していたのを見つけたわけ」

警官たちが男を問い質している最中に、
ラップトップが盗品とばれた彼は、即座に逃げ出しました。

国境ゲートの警察官が、詰め所に戻ってきました。
「彼はどこへ行ったの?」
「逃げられた。でも大丈夫。必ず捕まるよ」
「必ず?」
「もちろん100%捕まるよ。だってあいつパスポート落としてったもん
そう言って警察官は、男のパスポートを私に振ってみせました。

「バカなやつだね」
私は言いました。

「まったく」
警官は答えました。

「じゃあ書類を作るからこっちに来て」
私たちは入国管理所にある事務室に入りました。
担当はあの女性警官です。

部屋に1人の婦人が入ってきました。
「あの男の母親よ」
そういえば国境には男の母親が迎えに来ているのでした。
ピックアップトラックで会ったときは、暗くてよくわかりませんでしたが
明るい部屋で見ると、それほど年は取っていないようです。

婦人は取り乱すこともなく、普通の物腰でした。
公民館の会合にでも出席しにきたような様子です。

もちろん彼女は、自分の息子が私のラップトップを盗んだことを知っています。
しかしそんなことで動揺はしません。

その女性が厚顔だとか非情だとか、そういうことではないのです。
彼女にしてみれば、
息子は息子であり、自分は自分である
と、ただそれだけです。
個人主義というものです。

そんなわけですからいま、
部屋の中には警察と、盗人の母と、盗まれた被害者が三角形を作って
顔を合わせているわけですが、
とくに感情的になることもありません。
話は淡々と進みます。

「息子さんがどこに行ったかわかる?」
「さあ。わからないわね。もし家に戻ってきたら電話するわ」
「そうね。ところであなた」警官は私に話しかけます。
「この事件を訴訟のケース(Open case)する?」
「しないと、捜索は打ち切られるの?」
「もちろん捜索はするし、刑罰も与えるわ」
「訴訟のケースを開くとどうなる?」
「裁判の時に出廷してもらうわね」
「この国にまた来るってこと?」
「そう」
「じゃあ、訴訟しなくていいや」
「オッケー。じゃあ、書類に詳細を記入して」
私が事件の報告書に書き込んでいるうちに母親は帰されました。
呆れるほどあっさりしています。

そして最後まで母親が私に謝ることはありませんでした。
この個人主義
旅をしていると慣れますが、やはり日本との違いを実感します。

親子といえども、独立した別の人格なわけです。
ですからたとえ子供が犯罪を起こしても、
自分がしていないことを謝るのは理不尽なこと、となります。

日本だと子供が犯罪をすると、親が謝りますし
会社で社員が事件を起こすと、トップが謝罪します。
教員が不祥事を起こすと、校長が頭を下げます。

本来なら事件を起こしていない人物が、世間に謝罪します。
マスコミも(あるいは世間も)それを期待する風潮があります。

しかしそういった類の対応を期待して
海外を旅行すると、色々な場面で期待が裏切られて
ストレスが溜まります。
ですので、旅をするときはスイッチを切り替えます。

母親がいなくなり、書類を記入して、手続きは終わりました。

これでようやく国境をでることができます。
しかし夜も更けて、人も車もまばらです。
マンジーニ行きのバスはもうありません。

国境ゲートに立ちどうしようと考える。
手段はヒッチハイクになりそうです。
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ヒッチハイクをするなら、
身の安全を考えて、車を選ばないといけません。
よしなるべく高価で、堅気の人の車を狙おう私の方が強盗みたい)」
と思い道路に立っていると、国境警察官が声をかけてきました。
詰め所にいた時に、一緒にストーブにあたっていた警官です。
「どこまで行く気だい?」
「えーと、マンジーニ」
「オーケーオーケー。俺が車をつかまえてあげるよ
どういうことだろうと思って見ていると
国境を越えてきた一台の商業バンを止めて
ドライバーとなにやら話をしたあとに
「よし、あんたこれに乗っていきな」
と、私を呼びました。
「いいの?お金は?」
「もちろん無料だ。マンジーニまで行けるよ」

ということで、なんと無料マンジーニまで行けることになりました。

車に乗り込み、ドライバーに例を言うと
「まあ、しょーがねーな」
という感じで、頭をふっていました。
きっと警察にごり押しされたんでしょう。

とにかく助かりました。
悪い人がいれば、良い人もいます。
経験上それを知っているので、
ある国で嫌なことをしてくる人間がいても、
それだけでその国全体を憎むことはしません。
同じ国のどこかに必ず、
暖かい振る舞ってくれる人はいます。

30分ほどでマンジーニに着きました。
そこまで連れて行ってくれたドライバーに礼を言い車を降ります。

夜のマンジーニは危ないそうで、
さらにその日は金曜日でみんな酒を飲むから
とくに荒れるらしい。
タクシーを使ってホテルまで行きます。

そしてホテルにチェックイン。
(マンジーニに安ホテルはありません)
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長い一日が終わりました。
いろいろありましたが、
ラップトップが戻ってきたし、マンジーニまで来れました。

トラブルも、楽しい思い出にできそうな気がしました。

なによりこれで、私の「旅人生で盗難経験なし」の記録が
継続されたわけです。

しかし、そう思えたのもつかの間でした。
シャワーを浴びて、カメラを充電しようとしたら
充電器類を入れたポーチが無くなっていることに気がつきました。

あの額縁の男、ラップトップにはバッテリーが必要だと思い、
それらしきポーチも盗んでいたのです。

国境では最後まで落ち着いてチェックする時間がなくて
ポーチが無くなっていることに気がつきませんでした。

ああ、バッテリー関係がたくさん盗られました。

明日マンジーニの警察に行って被害届を出さないといけません。

こうやって、
旅人生の初の盗難は、最後の最後、ホテルで発覚しました。


今回の事件の主な話はこれで終わりです。

次回はおまけ。
マンジーニの警察に被害届を出す話と
私を置いて去ったバスを発見した話、
そしてマンジーニの町の様子をお届けします。

今回はこれで。
では。
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